フッ素とは
フッ素(F|fluorine)は原子番号9、常温常圧ではほぼ無色特異臭(淡黄)の有毒気体で、非常に反応性が高く、天然には蛍石・氷晶石などの化合物状態で地球上に存在していて、単体のフッ素ではほぼ存在しません。電気陰性度が最も高く、ガラスも白金とも反応するが、ヘリウム、ネオンとは反応しない性質があります。
元素「フッ素」の詳細
元素の詳細な情報、数値は次の表の通りです。
元素名 (英語) | フッ素 (fluorine) |
原子番号・原子量 | 原子番号9・原子量19 |
色・相 | 無色気体(淡黄) |
融点 沸点 | −219.62℃ −188.12℃ |
電気陰性度 | 3.98 |
イオン化エネルギー | 第1: 1681.0 kJ/mol 第2: 3374.2 kJ/mol 第3: 6050.4 kJ/mol |
同位体 | 14F~31F(19Fが安定) |
イオン | F– |
物理的性質
学校では、ガラスを腐食するHFとして触れることが多いです。フッ素はほぼ全ての元素と反応する非常にヤバイやつですが、一部人体に必須の元素であるとも言われており、歯磨き粉などに含まれている反応してある程度安定しているフッ素化合物は、人体には害がない濃度なので心配には及びません。
フッ素の同位体18Fは陽電子供給源として重要です。
化学的性質
フッ素は非常に危険で管理も封じ込めも難しいため、実験室レベルでもむやみに手を出さないか、十分すぎるほどの事前対策が必要です。そのため、実験を行うほどの利益があるかよく検討し、コストだけかかってそれ以上のものが得られないと判断した場合は実験をせずに我慢するのも大切です。リスクが非常に大きいです。
【フッ化水素(フッ化水素酸)の合成|常温で光があれば反応】
H2 + F2 → 2HF
【蛍石(ホタル石=フッ化カルシウム)の反応】
CaF2 + H2SO4 → CaSO4 + 2HF
※このあと「六フッ化ウラン(UF6)」としてウラン濃縮に利用可能
【高純度のフッ化カルシウムの合成】
CaCO3 + 2HF → CaF2 + CO2 + H2O
高純度のフッ化カルシウムは、130nm~8μmの光を透過するとされ、光学系材料に欠かせない物質です。また、天然のホタル石には不純物が多いため、より純度の高いフッ化水素酸を入手するには、ホタル石と硫酸から得たフッ化水素酸を炭酸カルシウムと反応させてフッ化カルシウムを得た後、純度の高い硫酸と再度反応させるなど工夫する必要がありそうです。(諸事情と自主規制により詳細は割愛)
【二フッ化酸素の生成】
NaOHaq + 2F2 → OF2 + NaF + HF
※二フッ化酸素は水と反応してHFを生じる。
OF2 + H2O → O2 + 2HF
【フッ化ナトリウムの合成と反応】※フッ素入り歯磨き粉に関連して
合成|HF + NaOH → NaF + H2O
反応1|NaF + H2O → Na+ + OH– + HF
反応2|HF + H2O → H3O+ + F–
フッ素入りの歯磨き粉を使用している場合、口内では上記のような反応が起きていると考えられます。それでなくてもフッ素入りの歯磨き粉に含まれているフッ化ナトリウム量は少なく、そのほとんどは歯磨き後に口の外に吐き出される上、最終的なHFと水の反応から生じるフッ素イオンは口内の他のものと反応して、何かしら安定性がある化合物になります。虫歯菌の一部と反応して虫歯菌を滅したり、食べ残しの一部と反応したりして、反応性が高いフッ素単体やHFのまま体内に大量に移動するのは不可能に近いです。
※フッ素入り歯磨き粉のチューブを丸っと一本丸飲みするくらいしてもおそらく体調が優れなくなる程度です。たいてい、過剰に摂取する前に自然に吐きますので、通常の歯磨きではリスクに怯える必要はそれほどない(持病がある方は別)です。