ナトリウムとは
ナトリウム(Na|Natrium(英語:sodium))は原子番号11、常温では固体、融点約98度のアルカリ金属で、ナトリウム単体は劇物及び第3類危険物に指定されています。水と激しく反応し、条件によっては爆発するため、空気に触れないように灯油につけて保存する等、特別な保管が必要です。単体のナトリウムは自然界には存在しません。
元素「Na」の詳細
元素の詳細な情報、数値は次の表の通りです。
元素名 (英語) | Na (Sodium) |
原子番号・原子量 | 原子番号11・原子量約23 |
色・相 | 銀白色固体 |
融点 沸点 | 約98℃ 約883℃ |
電気陰性度 | 0.93 |
イオン化エネルギー | 第1: 495.8 kJ/mol 第2: 4562 kJ/mol 第3: 6910.3 kJ/mol |
同位体 | 22Na、23Na |
イオン | Na+ |
物理的性質
炎色反応で黄色、ナトリウム単体では熱伝導率が高く、冷却材などに使用されることが多いです。常温25度では銀白色の固体ですが、空気とも水とも反応しやすいため、保存液として灯油を用いる必要があります。200万気圧の条件下では金属光沢を失い透明になります。
常磁性のある体心立方構造で、安定した同位体は23Naのみです。
生物にとっては生命維持に欠かせない電解質のひとつで、神経細胞や心筋細胞のほか、さまざまな細胞においてナトリウムイオン濃度差を利用しています。ナトリウムと塩素の反応したNaCl(食塩)を食物から摂取し、ナトリウムを補給する必要がありますが、塩分のとりすぎは細胞内外のナトリウムイオン濃度の差が適切な状態でなくなるため、高血圧等の原因となります。
化学的性質
単体のナトリウムが水を反応すると、水酸化ナトリウムが生じ、水素も発生します。この反応量が多く、この時に起こる発熱、酸素の影響があると爆発的に反応して、周囲に水酸化ナトリウムを撒き散らしながら爆発する事象が発生します。
2Na + 2H2O→2NaOH + H2
2NaOH + CO2→Na2CO3 + H2O
水酸化ナトリウムはさまざまな水と反応するため、人体表面の水とも反応して発熱し、皮膚を腐食します。化学火傷と熱傷を伴うため、何の対策もなくナトリウムと水を混ぜる実験をしてはならず、反応させる場合にも専門家の指導と立ち会い、入念な準備等が必要です。
水酸化ナトリウムは二酸化炭素を吸収しやすく、炭酸ナトリウムと水を生み出します。一度ナトリウムが水と反応して水酸化ナトリウムが生じたら、水素を生じて酸素と反応しやすくなり、空気中に存在する二酸化炭素と水酸化ナトリウムが再び水を生み出すため非常に危険な状態になります。
ナトリウムによる爆発的な事故や火災が起きた場合には、残っているナトリウムの量にもよりますが、金属火災用の粉末消火器、または、乾燥砂で覆う等の消化方法が取られます。水を掛けると火の手が大きくなり、二酸化炭素もあまり好ましくないことが分かると思います。
ナトリウムが空気中に放置されると酸素と反応して、金属光沢を失います。
4Na + O2→2Na2O
Na2O + CO2→Na2CO3
その後、さらに長期間空気に触れていると、炭酸ナトリウムとなります。ナトリウムの酸化被膜とも言える状態ですが、この状態で保存をするのは適切ではありません。炭酸ナトリウムは、重曹(炭酸水素ナトリウム)を加熱することでも得られる物質ですが、炭酸ナトリウムは吸湿性のある白色固体で日本の高温多湿な環境でそのまま放置すると、炭酸ナトリウムが水分を吸湿していき、内部のナトリウム単体と反応し、水酸化ナトリウムも生じます。
実験に使用するために単体のナトリウムが必要な場合は、この時点でさまざまな不純物が生成されてしまい、意味がなくなってしまいますので保管方法には十分注意しましょう。
ナトリウムと塩素が反応すると、塩化ナトリウムができます。
2Na + Cl2→2NaCl
これはいわゆる食塩と同じもので、成人男性の摂取量目安は1.5g~7.5g/1日、成人女性の摂取量目安は1.5g~6.5g/1日とされています。運動量等によって若干数値は変動しますが、過剰な塩分摂取は避けましょう。