窒素とは

2021年9月26日

窒素(N|nitrogen)は原子番号7、常温25℃で無色無臭の気体で、さまざまな化学反応を経て、気体の窒素と固着させて肥料として使用することで、近代農業を可能にしている重要な物質です。農業、人体の組成、爆発物と幅広く活用されている重要元素です。

 

元素「窒素」の詳細

窒素

元素の詳細な情報、数値は次の表の通りです。

元素名

(英語)

窒素

(Nitrogen)

原子番号・原子量原子番号7・原子量14.01
色・相無色・気体

融点

沸点

-210℃

-195.79℃

電気陰性度3.04
イオン化エネルギー第1: 1402.3 kJ/mol
第2: 2856 kJ/mol
第3: 4578.1 kJ/mol
同位体10N~25N|14N・15Nが安定
イオン価数5・原子価3

 

窒素の物理的性質

窒素は、地球の大気の約8割を占めるありふれた物質で、極付近ではオーロラの光のうち、赤(640~770nm)、青(430~490nm)、紫色(380~430nm)は窒素の発光スペクトルに関係[出典]するものです。窒素がないときれいなオーロラは見られません。

 

植物にとっては必須の肥料「窒素・リン酸・カリウム」としても重視され、葉を大きくする働きがあります。ポテチの酸化を防ぐために袋内に窒素が封入されることもあります。

 

融点-210℃より、液体窒素(液化温度は-195.8℃)が非常に冷たい事は有名で、爆発することも燃焼することもほとんどなく安全なため、高等学校の化学部でも一般の方でも入手は可能ですが、専用の保管容器がないとすぐになくなってしまいます。

 

窒素の化学的性質

液体窒素の比重は0.808(-195.8℃)、密度は1.251 g/L(0℃)で、窒素単体では安全で安定です。

【アンモニアの合成】25~35 MPa・約500 ℃|平衡

N2 + 3H2 ⇔ 2NH3

【五酸化二窒素の合成(リン酸も同時にできる)】五酸化二リン(P4O10

P4O10 + 12HNO3 → 4H3PO4 + 6N2O5

【硝酸の合成】

N2O5 + H2O → 2HNO3

【硝酸の合成|オストワルト法】

4NH3 + 5O2 → 4NO + 6H2O

2NO + O2 → 2NO2

3NO2 + H2O → 2HNO3 + NO

(全体)NH3 + 2O2 → HNO3 + H2O

【硝酸と炭素(木炭など)の反応】

4HNO3 + C → CO2 + 4NO2 + 2H2O

【硫酸アンモニウム(硫安)の合成】肥料[出典]

2NH3 + H2SO4 → (NH4)2SO4

【塩化アンモニウム(塩安)の合成】肥料|ソルベー法

NaCl + NH3 + CO2 + H2O → NH4Cl + NaHCO3

※単純式:NH3 + HCl → NH4Cl

【硝酸アンモニウム(硝安)の合成】肥料[出典]

NH3 + HNO3 → NH4NO3

Ca(NO3)2 + 2NH3 + CO2 + H2O → 2NH4NO3 + CaCO3

【石灰窒素CaCN2の合成】肥料[出典]

CaCO3 + 2NH3 + CO → CaCN2 + 3CO2 +3H2

【尿素の合成】(人類で初めて無機物から有機物合成に成功した物質)

カルバミン酸アンモニウムの場合(有機触媒)

NH4+OーCOーNH2 → (NH2)2CO

ヴェーラー合成[詳細]

NH4+OーC≡N → (NH2)2CO

 

気体の窒素をなんとかして固形物や塩にしようとする試みは、近代農業の推進に大きく貢献(むしろ近代農業発展のため)しています。窒素をアンモニアという刺激臭があって使い道がなさそうな毒に変換するのにも意味があり、アンモニアを経由して硝酸、硫酸などと反応させると植物に必要な栄養素になります。

 

生き物や人間の排泄する尿素もそのまま植物の栄養になる場合があるため、尿素も決して無視できるものではありません。人の体内で生成してしまうアンモニア関連の物質は尿素に変換されて排泄され、その過程を知るのも大切です。(生物分野になるので割愛しますが)

 

出典・参考

窒素分子の発光スペクトル

https://www.arios.co.jp/library/p21.html

標識石灰窒素の合成

https://www.jstage.jst.go.jp/article/dojo/29/5/29_KJ00002480326/_article/-char/ja/

石灰窒素|BSI生物科学研究所

http://bsikagaku.jp/f-industry/Nitrogenous%20lime-industry.pdf

周期表

Posted by 化学担当